ユニセフなど「飢餓は3年連続で高止まり」と新報告書発表(2024年8月1日)
ユニセフ「新報告書」を発表:飢餓は3年連続で高止まり
~2023年、世界の11人に1人が飢餓に直面 アフリカでは5人に1人~
新報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状
(原題:The Latest State of Food Security and Nutrition in the World (SOFI)
ユニセフ(国連児童基金)など国連の5つの専門機関が本日発表した最新の「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」報告書によると、2023年には約7億3,300万人の人が飢餓に直面しており、これは世界では11人に1人、アフリカでは5人に1人に相当します。
●世界の栄養不足の現状は2008年~2009年当時の水準に相当しており、15年後退しています。
ブラジルで開催されたG20飢餓と貧困に対抗するグローバル・アライアンス・タスクフォース閣僚会合に合わせて発表された本年の年次報告書は、2030年までにSDGs(持続可能な開発目標)の目標2「飢餓をゼロに」を達成するには、世界は大きく後れをとっていると警鐘を鳴らしています。報告書によると、世界の栄養不足の現状は2008年~2009年当時の水準に相当しており、15年後退しています。
●世界の飢餓水準は3年連続で高止まり
発育阻害(スタンティング)や完全母乳育児など特定の分野では一定の進展が見られるものの、世界の飢餓水準は3年連続で高止まりしており、2023年には7億1,300万人から7億5,700万人という驚くべき数の人々が栄養不良の状態にあり、これを中間値(7億3,300万人)で比較すると2019年より約1億5,200万人多いことになります。
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ユニセフをはじめとする5国連機関は、現在の傾向が続けば、2030年には約5億8,200万人(そのうち半数はアフリカに暮らす人々)が慢性的な栄養不足に陥る、と警鐘を鳴らしています。この予測は、SDGsが採択された2015年の水準に酷似しており、進捗の停滞が懸念されます。
●大きな格差も浮き彫りに
報告書は、貧困リスクにおける大きな格差も浮き彫りにしました。データがある38カ国全体では、ひとり親家庭で暮らす子どもたちは、他の子どもたちの3倍以上の確率で貧困の中で暮らしています。障がいのある子どもや少数民族・人種的背景を持つ子どもも、平均より高いリスクを抱えています。
「貧困が子どもたちに与える影響は根深くかつ深刻です。ほとんどの子どもたちにとって貧困は、十分な栄養のある食事、衣服、学用品、暖かい家などがなく成長することを意味します。それは権利の実現を妨げ、身体的・精神的健康の低下につながる可能性があります」とイノチェンティ研究所のボー・ヴィクター・ニールンド所長は述べています。
●飢餓以外の重要な結果
本報告書は、何十億もの人々が十分な食料を手に入れられないままであることを指摘しています。2023年には、世界で約23億3,000万人が中程度または重度の食料不安に直面しており、この数字は新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まった2020年に急増して以降、大きく変わっていません。このうち、8億6,400万人以上が、丸1日以上食べる物がないような、深刻な食料不安を経験しました。この数字は2020年以降も依然として高く、ラテンアメリカでは改善が見られるものの、特に人口の58%が中程度または重度の食料不安を抱えるアフリカでは、より広範な課題が存続しています。
健康的な食事への経済的なアクセスも依然として重大な問題であり、世界人口の3分の1以上が影響を受けています。新しい食品価格データと方法論の改善により、2022年には28億人以上の人々が健康的な食事をとる経済的余裕がないことが明らかになりました。この格差は低所得国で最も顕著で、高所得国の6.3%に対し、71.5%の人々が健康的な食事をとる余裕がありません。注目すべきは、この数字がアジアと北米、欧州ではパンデミック前の水準を下回ったのに対し、アフリカでは大幅に増加したことです。
乳児の完全母乳育児率は48%まで向上していますが、世界的な栄養目標の達成は困難です。低出生体重児の有病率は15%前後で推移しており、5歳未満児の発育阻害は22.3%に減少しているものの、目標にはまだ到達していません。さらに、子どもたちの消耗症の有病率は顕著な改善が見られない一方、15~49歳の女性の貧血は増加しています。(中略)
●飢餓撲滅のための資金調達
今年の報告書のテーマである「飢餓、食料不安、あらゆる形態の栄養不良をなくすための資金調達」は、SDGs目標2の「飢餓をゼロに」を達成するためには、農業食料システムの変革と強化、不平等への取り組み、すべての人が手頃な価格で利用できる健康的な食事の確保など、多面的なアプローチが必要であることを強調しています。また、食料安全保障と栄養のための資金調達の定義を明確化かつ標準化し、より多くの、そしてより費用対効果の高い資金調達を求めています。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルをはじめ、報告書を作成した国連5機関の長は、報告書のまえがきで次のように述べています。「食料安全保障と栄養のための資金がどれだけ不足しているかを見積もり、その差を埋めるための革新的な資金調達手法を取ることは、私たちの最優先事項の一つでなければなりません。SDGs目標2.1にある、飢餓をなくし、すべての人々が安全で栄養価が高く十分な量の食料を入手できるようにするための政策、法律、介入および、SDGs目標2.2の、あらゆる形態の栄養不良をなくすための政策は、多大なリソースの動員を必要とします。これらは未来への投資であるだけでなく、私たちの義務でもあります。私たちは、現在および将来の世代が十分な食料と栄養を得る権利を保障するために尽力します。(中略)
ラッセル事務局長は次のように述べています。「栄養不良は、子どもの生存、身体の成長、脳の発達に影響を及ぼします。世界の子どもの発育阻害の割合は、この20年間で3分の1(5,500万人相当)減少しており、母子栄養への投資が実を結んでいることを示しています。しかし、世界の5 歳未満児の 4 人に 1 人は栄養不良に苦しんでおり、栄養不良は子どもたちに長期的な悪影響を及ぼす可能性があります。私たちは、子どもの栄養不良をなくすために、早急に資金調達を強化しなければなりません。世界はそれを実行することができますし、また実行しなければなりません。それは道義的な必然であるだけでなく、未来への健全な投資でもあるのです。(後略)
※全文書は下記の日本ユニセフ協会のホームページをご覧ください。
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